投稿者:2106 様




前回の「祟りの話」で力は封印されたものの・・・・・

封印とは時間が経つと弱くなるものだと知ってしまった出来事です。

この話は僕が21の時、勤めていた武○野市にあるアニメ制作会社での話です。



アニメ会社というのはTVシリーズが始まると24時間体制で動く事がほとんどで、

いつも人がいます。

その会社が入っているビルは古く4階建てで、不思議なことに階段が2つあります。

1階の入り口を入って真っ直ぐ廊下が伸びているんですが、

その突き当たりに階段が正面とその左側90度の場所(直角の位置)にあるんです。

正面の階段は緩やかで左の階段はかなりの急になっています。

しかも、3F迄しか伸びていなくて、2Fからは隣の階段と鉄の重い扉が間を隔てています。

その上、古いせいかコンクリートが厚めで音が反響してしまいます。

どちらの階段からも会社には行けるのですが、3Fに会社があるのと鉄の扉を開けなくては

いけないので、僕らは緩やかな正面の階段を使っていました。



僕が勤め始めて1年がたったある初夏の日のこと。

進行たちが階段の不思議な出来事で困っていると相談して来ました。



「階段で誰か降りてくる気配はするのに誰とも擦れ違わない。」

といったものでした。

僕は、

「ぇ?。。。忙しくて寝てないから寝ぼけたんじゃないの?それか音の反響とか…」

と笑って言いましたが、その進行は真面目な顔をして、

「2106さんはデスクになってから最近終電で帰るようになったじゃないですか?
 だから知らなかったんですよ。夜中の名物になってますよ。
 みんな怖がってしまって、最近は夜中に回収も行けないんですよ。」

と言ってきました。

このままでは仕事が遅れると思い詳しく聞くと・・・

{夜中、外注さんの回収から戻って来た時に階段を上がっていると上から人が降りてくる音がするんだそうです。夜中ですし、このビルにいるのはうちの会社の人間か大家さんしかいません。(2Fは空き室、4Fは大家の家)
だから、誰か買い物にでも行くのか?それとも回収かな?と思いながら上がって行くと誰とも擦れ違わない。あれ?っと思いながらもその時はその子も気のせいかな?と思っていたらしいのですが・・・。そん事を何度も経験してしまうのだと。
そして日が経つに連れ他の進行もそんな経験をしはじめたので、みんな気味悪がってる。}


という事だったのです。

しかし、これ以上仕事に支障が出ては大変になるので僕は、

「ふ〜〜ん。じゃ今夜確かめてみよう。お化け退治だ。」

と言いました。

その日僕らは仕事を早く終え、夜に備えました。

ところが・・・・。

何も起きないじゃないですか・・・。一週間も泊まってみましたが何も起きません。

その次の週も。そして1ヵ月が経ち、他の子たちも気のせいだったのかな?

ということになり、通常通りの作業が戻ってきました。

そのうちそんなことがあった事も忘れてしまった秋の出来事でした。





その日はTVシリーズの打ち上げって事もあり、1次会を終え、2次会を会社の近くで

やることになり、みんなでしこたま飲んでいました。

盛り上がって騒いでいるうちに、終電もなくなってしまったので今日は会社でみんなで

泊まろうって事になりました。

そして、3時ごろ僕はかなり酔ってしまったので事務の女の子に付き添ってもらい

先に会社に向かいました。そして階段を上がろうとしたときです。

上から人の気配を感じました。

僕は隣にいた事務の女の子に、

「あれっ?今日誰か残ってたっけ?」

と聞くと

「ううん。誰もいないよ。だって鍵は2106と私しか持ってないじゃない」

と言います。

「じゃ他の会社の人かな?」

「えっ?なんで?」

「ほら、誰かいるよ」





コツ、コツッ・・・。





「ほんとだ。どこの会社の人だろうね。」

と言って見上げました。

階段の電気が点いていないので上は真っ暗です。

かろうじて踊り場にある小さな窓から明かりが零れる程度。

それが手すりの間が20aほど空いているので窺えます。



「何で電気点けないんだろうね?」

「そうよね。真っ暗なのに…。」

そう言うと階段の電気のスイッチに僕は手を伸ばしました。





カチッ。





・・・・・・・・。





・・・・・・・・。



「あれっ?点かない…。」

「おかしいな?行くときは点いていたのに…」

「ま、いいや。とりあえず上がれば分かるよ。きっと困ってるだろうし。
 じゃ、俺が行ってくるわ。」

「じゃ、こっちから降りてくるかも知れないから下にいる。」

そう言って僕は彼女を下に残し、階段を上がりはじめました。

すると1階の踊り場まで来たときです。





カツン・・・、コツン・・・、カツン・・・。





ゆっくり、ゆっくりと降りてくる音がしました。

そこで僕は、

「あ、今行きますから待っててくださいね。」

と言いながら急いで上がって行ったんです。





ダダダダダダダダ・・・ダンッ。





僕の靴の音が響きます。

2階の踊り場で出くわすだろうと思って階段を上がっていくと3Fまで行ってしまいました。





「あれれ?誰もいないぞ?」

と彼女に大声で言うと音は聞こえているそうです。





カツン・・・、コツン・・・、カツン・・・、コツン・・・、カツン・・・。






ゆっくりと確実に・・・降りているんだそうです。

「そうだ!もしかしたら隣の階段じゃない?音響くから」

と言われ3Fまでしかない隣の階段を扉を開けて耳を澄ませました。

すると音は聞こえています。



「あ、こっちか…。」

僕はそうつぶやいて今度はこっちの階段を急いで下りていきました。

ところが・・・またいないんです。

擦れ違わないんですよ。

下まで着いてあれっ?って顔をしていると、彼女、



「音はまだ聞こえているわよ。幻聴じゃないよね・・・これ?」

って言うんです。

そして僕は耳を澄まします。

確かに音は聞こえています。

二つの階段から。






カツン・・・、コツン・・・、カツン・・・、コツン・・・、カツン・・・。






ここで僕らは酔いが一気に醒めました。

気が付いたんです。

二人の会話は聞こえているはずなんです。

声に近い感じで話していたんだから。

上と下で、なのに・・・。

音は聞こえるのに姿が見えない!!!

彼女と二人でパニックに陥りました。

そんな間にも音は確実に聞こえ、降りてきます。僕は逃げようと彼女を促すのですが、

彼女は腰を抜かしたのか座り込んで動こうとしません。






カツン・・・、コツン・・・、カツン・・・。






「もう、いやだよ…。なんでこんな目に遭わなきゃいけないの…?」

彼女は呟きます。

僕は勇気を振り絞り、降りてくる音を二つの階段が見渡せる位置に立って監視するように

睨んでいました。

彼女の盾になる感じで。

心の中では
「あぁ、またとんでもない目に遭うのかなぁ…。何度同じような目に遭えば学習するんだ?」

と思いながら・・・・・。

そしてとうとう音は階段の踊り場までやってきました。

正体を見極めようと目を凝らしたその瞬間。

僕は氷つきました。

両方の階段の踊り場には真っ赤なハイヒールを履いた足が1本づつ。

右(正面)の階段には左足。左の階段には右足。
(多分そうだったと思う。それだけが頭の中にイメージ出来た)

そして上半身は見えません。



「な。。。なんだぁ!?」

と声を出すと二つの足はくるりと向きを変え上って行ってしまいました。






「あはっ、あはっ、あははははははははははははは・・・」

女のとても楽しそうな甲高い笑い声を響かせながら・・・。





僕は訳が分からなくて呆然と立ちすくんでいました。

後ろに隠れるように座っていた彼女はとうとう泣き出してしまいます。

するとそこへたらふく飲み終えた進行達がご機嫌で戻ってきました。

すると、僕達を二人の方を見るなり驚き強張った様子みせてゆっくりと近づいてきました。

何かに脅えるように・・・。

素早く僕達を抱え込むように抱きかかえると無言で走り、廊下の外に連れ出します。

そして隣(そのビルの1F)にあるビデオ屋にダッシュで駆け込みました。

僕はその様子にびっくりしながらも今あった出来事を話そうとすると、

進行たちは脅えながら外を見やり、



「おい!○○!あいつ、ついてきてないよな。あれ何ですか!?あぁ〜怖かった。」

「え…?」

「ふぅ…、マジびっくりした。
 廊下の奥から不気味な女の大きな顔が口を開けて近づいてたんですよ。
 気付かなかったんですか?やばいと思ったから急いで連れ出したんだけど。」

「間に合わなかったらどうしようかと思ましたよ。
 あの口に飲み込まれたら死んじゃうんじゃないかって。
 でもそう思ったから僕らも急いで連れ出したんですけどね…。
 でも本当に良かった。みんな無事で」

「そうですよ。何やってたんですか?あんな廊下の真ん中で。」

そう言われて僕は力なく「ははは」と笑いながら、

「そうだね。ホント助かったよ。」

って答えました。

そんな会話をしている内に落ち着いてきたので、今僕と彼女が遭遇した出来事を話しまし

た。すると彼らは、



「マジっすか!?やばかった〜〜〜。」

「俺らも確かめようとは思ってたんですけど勇気なかったのに。」

「勘弁してくださいよ〜。何かあってからじゃ遅いんですよ。」

「始めは○○さんを酔った勢いで襲ったのかと思いました。」(ヾ(--;)ぉぃぉぃ)

いろいろ言われましたよ・・・。マジで・・・。

でも、僕も彼女も、そして彼らも見たんです。確かに・・・。その存在を・・・。

しかし、その日を境にその現象はなくなりました。が、

代わりと言ってはなんですが、今度は室内で後ろに気配を感じる。

撮影室からはいびきがはっきり聞こえるなどいろいろ起きました。

そこで、お祓いでも行こうかって話をしているうちに会社は引越しをしてしまいました。

あの現象は今どうなっているかはもう分かりません。その後、僕も会社を移りましたし・・・

ただひとつの事実を除いては・・・。

僕らのいた会社が引っ越したあとそこはテナント募集の看板がかけられています。



今でも・・・。


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