投稿者:浪速かげろう 様



外泊許可。

入院した事がある方ならご存知でしょうが、

病状の重くない患者さんは、大型連休の前や年末などには自宅での外泊が許されます。

これは昨年末に私が体験した出来事ですが、

今この原稿を書いているのが2月中旬ですから、ほんの少し前の話です。



大晦日を数日後に控えた病院の外科病棟には、冒頭の理由で私の様な、

安静の必要な患者以外は皆、自宅に帰っており病室には何人もおりませんでした。

消灯を告げる静かなアナウンスと共に室内が暗くなりましたが、

1日中寝ているしかない(疲れてもいない)患者にとっては、

すぐに寝られる訳もなく、ただ周囲の音、廊下を歩く看護士さんの足音とか、

どこかの病室から漏れ聞こえるナースコールや患者の話し声だけが、耳に入ります。



カコンっ、ジャッシャー



何時頃だったのか、隣の個室病棟の水洗トイレを流す水音がしました・・・



ジャッシャー

・・・しています?

ジャッシャー

・・・止まりません。やけに長いね?

ジャッシャー



寝られないとは言うものの、だんだん耳障りになってきた水音に、

私がナースコールに手を伸ばした、まさにその時です。



「は〜い、どうされました?」

「すいません、隣の部屋のトイレの水がさっきから流れっぱなしみたいなんですが。

寝られないんで止めてもらって下さい。」

「わかりました、今いきます。」



私以外にも同じ事を思っていた患者さんがいたのか、

カーテンごしに聞こえるやりとりを聞きながら声のする奥の方に首だけを向けて、

そんな事を考えていると廊下を歩く何人かの看護士さんの足音と気配が聞こえてきました。

ガチャン、カラカラカララララ

乾いた静かな音がしてすぐに水の流れる音が止まり、元どうりの静けさが戻って来ました。

・・・?・・・?

私の中に湧き上がった疑問・・・

今たしか隣の部屋の「鍵」を空けてたよな、って事は外泊してるのか?

それに看護士さん1人じゃなかったな、普通の巡回は1人なのに?

なんでだ?・・・

そんな事を考えながら、いつの間にか寝ていた私は翌朝、

思いもしてなかった事を看護士さんから言われました。




「かげさん、夕べはごめんなさいね。隣がうるさくて。」


「ああ、いいえ僕じゃなくって奥の患者さんですよ。僕もナースコールしようとしたけど。」


「え?奥の患者さんって?この部屋の入院患者さんみなさん、
お正月まで外泊許可で帰ってるから残ってるのはかげさんだけよ。
あらでも変ね、コールボタンのナンバー記録 ・・・
これ かげさんと違うわ、たしかに奥のベッドのコールボタンのナンバーね・・・。」


みなさんは、どう思われるでしょう?

この当時の私は、事故で背骨を傷めて歩くことはおろか、

ベッドの上に起き上がる事もできませんでした。

つまり奥のベッドのナースコールのボタンを押す事など、したくても不可能でした。

仮にナースコールの配線が混線していたとしても、あの声の説明がつきません。

それだけではありません。

これは退院後、偶然に再会した看護士さんから直接聞いたのですが、

私の隣の個室病棟は、病院では伝説の部屋だそうで、その夜の患者はいませんでした。

そして複数の看護士さんの人数は4人、なんと宿直の看護士さん全員です。

恐ろしくて、とても1人では、その部屋に行けなかったから・・・。と言っていました。

その個室病棟のトイレのコックは、まるで誰かの見えない手が引っ張っているかの様に、

無人の時だけ、ある時間になると真横に引き上げられているそうです・・・いつも。





まだ続きます。

宿直の看護士さん4人がナースセンターに戻った直後、

突然ナースセンター内にある職員専用トイレの水が流れ出した・・・

看護士さんは4人ともそろっていると言うのにです。

その場は凍りついたそうです。

私にこの話をしてくれた看護士さんは、その病院を退職したと言っていました。


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