投稿者:浪速かげろう 様 |
電話がきた。 それはちょうど、私が遅い昼食をとっている時だった。 電話の相手は、顔なじみの所轄署の担当、A刑事からだった。 電話の内容は、私が面倒をみていた「○○・某」が昨夜、亡くなった、とA刑事が話している 途中で、私は口を挟んだ。 『おおきにAさん、はっちゃんの死因、事件モノちゃうんやろ。 そんで死亡時刻は、明け方の多分やけど、3時半ぐらいとちゃう?』 「なんで知っとる・・・の、って、ほうか、やっぱりあれか、あいつカゲちゃん所、 顔だして行ったんか・・・」 『ああ、寄っていきよった。そや、Aさん、あんたに借りたゼニ とうとうAさんに返されへんまんまで、すまんて、そない言うて寂しそうにしとったわ。 で、Aさん、聞いても かめへんか?あいつ、何が原因で死によったん?』 「かめへんよ。それもあって電話したんやからな。時間は、カゲちゃんの言った時間や。 原因は酒やろな。ツレ(友人・知人)のドヤで飲んでて突然、吐血して苦しみだして、 救急車が現場に着いた時には・・な。 今、司法解剖にまわっとるさかい、夕方までにはハッキリする思うわ。」 『酒やろな、あいつ重症のC型肝炎、患っとったし、なんべん「酒やめいっ」て言っても、 (ワシ飲んで死んだら本望や。)なんて強がり言うとったしな。 でも、公路(公園・路上)で行き倒れて、無縁仏って言う訳やない。 ツレに見取られながら、畳の上で逝ったんなら、まだ救われてると思うわ。』 この後の電話のやりとりを、ここで長々と書いても仕方ないと思うので省略しますが、 その警察の地下にある遺体安置室で、本人確認をかねての焼香やら、役所と葬儀の日程 で連絡を取ったりで、午後の予定はすべてキャンセルする破目になったのです。 心の中で、故人の冥福を祈りながら、A刑事と2人で遺体安置室を出かかった時、 私達の背中に「おおきにな」 と礼を言う声がした様な気がして、さり気なくA刑事の顔を見ると、 何事も無かったような顔で歩いているので、私は、そのままA刑事に見送られて、 所轄署の玄関を出ました。 その頃になって、A刑事は、やっと 「いや〜さっきなぁ、安置室を出た時なぁ「おおきにな」ちゅうて、 礼を言う声がした様な気がしたんでな、ワシ、カゲちゃんの顔、チラっと見たんや。 ほしたら自分、すまして歩いてるさかい、ワシほっとしたわ。空耳ってあるんやな。」 『Aさん、それ空耳とちゃうで・・・』 私のその一言に、見る見る青ざめるA刑事の顔が、今も忘れられません。 |