投稿者:わんぱく小僧 様



それは、今から35年程前の8月中旬の夕方の出来事でした。

その年は一ヶ月以上も日照り続きで、水不足がニュースとなっていました。

その日も異常に暑い日だったことを覚えています。

この出来事が今でも頭に残っているので、その日の朝から夜の間のこと、

両親の顔色の変り様を覚えているのです。



私は東京の下町に生まれ、4人兄弟の三男でした。

わんぱくな子で、当時は通っている小学校で早朝のラジオ体操が行われていました。

何もすることのない自分は早朝からこのラジオ体操に行くことが夏休みの日課でした。

親も朝からうるさい子供を外へ追い出したい気分だったのでしょう。

その日も学校の校庭に着くと、すでに同じわんぱく小僧が校庭を走り回っていました。

しかし、自分達7,8名の子供以外に先生や大人の姿が見えないのです。

遊び回っていた自分たち以外に誰もいないことが不思議でした。



帰っていいのか迷っていた時、

校舎の二階の窓に人影を発見した友達の一人が大きな声を上げました。

皆で走って校舎の玄関まで行き、重い引き扉を皆であけようとしましたが開かないので、

校舎の裏に走って回りましたが、裏玄関の扉もまた閉まっていました。

「誰だろう?」と皆で思いながらも帰ることにしましたが、

仲間の一人が「兵隊さんだぜ・・・たぶん?」と言うのですが、

すでに戦後15年ほどで、兵隊さんの姿などは目にすることなどありませんでした。

その日は不思議な感じを抱きながらの日でした。

それぞれ家に戻りご飯を食べて、また遊びに外へ出ます。

また昼に戻り、昼ご飯を食べ、また外に出ての遊びです。

その日は異常に暑くて、少しバテ気味だったのでしょう、夕方が涼しいことも覚えています。



夕方の6時ごろだったと思います。

家の近くの遊び場になっている路地があるのですが、自分達は勢ぞろいでいました。

買い物帰りのおばさんが「もう夕ご飯だから帰りなさい!」と言われたり、

サンマの焼く匂いがしたりしていました。

当時は広く見えた路地でしたが、車がやっと通れるほどの道幅なのでしょう。

道の両側に向かい合って、よその家の垣根に背中をもたれて、

見合うようにして座っていました。

また、おばさんが左方向から来て右へ通り過ぎて行き、

また仕事帰りの白い半そで姿でネクタイをしたおじさんが通り過ぎていく。

皆で自分達の前を歩いて通り過ぎていく大人を見ながら、

暫らくの時間が経ったと思います。

本通りから路地に入って30メートルほどのところに自分たちが座っているのですが、

次々と過ぎていく大人を見ながら、目を本通りのある方に目を遣ったのです。

薄暗くなっていましたが、大人が一人で自分達の方に近づいて来たのです。

黒っぽい服装なので大人だということは理解出来ましたが、

なかなか顔まで確認出来ませんでした。



徐々に近づいてきます。

不思議に思えたのは肩に何かを担いでいるのです。

そして、大きく両足を交互に大きく上げて歩いているのです。

帽子をきちんと被っており、真っ直ぐ前を見ている感じでした。

肌の色は浅黒い感じでした。みんなジーット見つめ、あっけにとられたのでしょう、

放心状態という感じでした。子供たち同士で、目を合わせたのを覚えています。

その時は自分達は不思議な光景だとは思ってはいても、まだ怖さはなかったのです。

怖くなったのは、その光景を家に戻り、両親に話してからなのでした。

両親の驚きと奇妙な形相は今でも目に焼きついているのです。

母親が言いました。



「・・・・戦死した・・さんの息子がお盆だから帰ってきたんだ・・・」。


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