投稿者:七月 蚊 様 |
僕が経験した事は、恐怖体験と言えるのかどうか・・・・・ 正直言ってあまり自信がありません。事実、それを体験した時もその後においても、 僕はその体験に恐怖感を抱けてないからです。 むしろ、その時の僕は懐かしいようなそんな気がしていました。 僕が最初にそれを体験したのは、たしか小学校中学年の時の学校帰りでした。 その頃の僕は、一人で家に帰る事が多く、 その日もいつものように一人で帰路へとついていたんです。 当時から、オカルト的なものに興味を持っていた僕は、 そういったものと出会えないものかと、いつもとは違った道を進んで歩いていました。 色々な小道や裏道を通っていると、少し開けた見慣れない道に出ました。 そこは赤レンガと夕焼けが街を彩っていました。 建物も、それを囲む塀も、自分が踏み締めている道路さえも・・・・・ 赤レンガが使われていました。 見慣れない街の風景に好奇心を抱いた僕は、キョロキョロと周りを眺めていました。 その時、いえ、本当はその景色の中に入った瞬間から、 僕は砂糖を焼いた時の様な甘くてなんだか懐かしい様な匂いを嗅いでいたんです。 不思議なものですね。 まったく知らないはずの景色、空間なのに、とっても懐かしいんです。 赤い、古い感じの建物を見ていると、不意にT字路に差し掛かりました。というよりも、 僕が通って来た道の方が、Tの上の棒の部分だったわけなんですが・・・ 僕が家に帰るためにはそのまま道を、直進すればよくて、 その道を曲がると家とは反対の方角になってしまいます。 それに、なんとなくなんですが、 当時の僕は、家に早く帰らないといけないという気持ちがあったから、 脇道に行きたかったのだけど行けなかったんです。多少、名残惜しかった僕は、 その曲がり角に差し掛かった時に、そちら側を見てみたんです。 曲がり角の向こうは、古い感じの建物があって、 そこに昔の人が着ていたような着物(なんでしょうか?)を着た子供たちが、 楽しげに遊んでいたんです。近くには、母親らしき人物もいました。 まぁ、その事は大した事ではないのですが、その向こう、ちょうど僕が居た所の反対側、 そちらもT字路になっていたのですが、そこに不思議なモノがあったんです。 《歩道橋》ってありますよね。そこにアレがあったんです。 それ自体は別に不思議でもなんでもない事なんですが、ただ、その《歩道橋》には、 対になる反対側がなかったんです。道路をまたぐ《橋》の部分がなくて、 ただ単に歩道を昇って降りるそれだけしか出来ない《歩道橋》だったんです。 「アレはなんだろう。」 そんな事を思っていたんですが、その時はどうしても早く帰りたかったので、 僕は、そのまま通り抜けようとしたんです。 僕が、その道を通り抜けようとすると、なぜか曲がり角の方から視線を感じたんです。 えっと思って、横目で曲がり角の方を見てみたんです。 そうしたら、今まで楽しげに遊んでいたはずの子達とその母親らしき人が、 僕の方をじぃーっと見つめていたんです。 さすがに、奇妙には思ったんですが、やはり恐怖感はなくて、そのまま家に帰えりました。 後日、友達を連れてその日通った道順とまったく同じ道を通ってみたんですが、 その場所にはどうやっても辿り着けませんでした。 この事を他の友達にも言ってみたんですが、大概は笑うだけで信じてもらえませんでした。 ところが高校に入って、部活の合宿の夜に、同じ話をしてみたんです。 その時は、怖い話というよりも笑いを取れるかな?なんて、けっこう軽い気持ちで話したん です。その時、部屋にいた人にさっきの経験を話してみると、 やはり大概の人は笑ったりしたんですが、 その中の一人が突然、 「その経験。俺もあるよ。」って、言い出したんです。 さすがに、今まで笑っていた人たちも一様に、えっ?って顔をしてましたね。 もっとも僕の方も、まさかそんな反応が来るとは思っていなかったわけなんですが・・・ その友達が体験したものは、詳細こそ違え、僕の体験した事と非常に似ていました。 その友達は、小学校の時に、こちらに転校して来たらしく転校して来る以前の、 まったく僕の暮らしている所と、かけ離れた所での体験だそうです。 それでも、街は赤レンガで造られていて、 そこでも砂糖を焼いた様な甘い香りがしていたそうです。 ただ、友達と僕とで決定的に違っていた事は場所だけではなく、 僕は一人の時に体験したのに対し、友達は自分の祖父と一緒に散歩していた時に、 体験したらしいのです。 もっとも、その場所に入った時は、すぐ傍にいたはずの祖父は見えず、 出た時にようやく見つかったらしいのですが・・・。それを聞いた時、 僕は何の疑問も持たずに、不思議とすんなりとその話を信じる事が出来ました。 きっと、あそこはそういうもの。 心のどこかでそんな風に思っていたからなのでしょう。 二人の近似したエピソードが出会ったためでしょうか。 僕の過去の思い出はその瞬間に怪談になったような気がします。 別に、今でもこの体験は恐怖体験だとは思っていません。 ただ、他の人には僕があの時、T字路を曲がっていたならば、 きっと帰っては来れなかっただろうとはよく言われます。 それでも、あの甘い香りと赤い景色に、僕はどうしても恐怖心を抱けないんです。 皆さんも、もしかしたら同じ体験をしたことがあるかもしれません。 それは定かではありません。 僕がただひとつ言える事は、あの場所は特別かもしれませんが、 忌避しなければならない遠い場所なんかじゃなくて、 時々しか行けない隣人の家みたいなものなのだと思います。 今でも、時々道を進んでいると、あれ?と思う時はあります。それでも、 あの風景に恐怖心よりも憧憬を抱いて、 僕はこれからも、 あの場所と付き合っていくのだと思います。 |